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ベーシストなら誰もが一度はスラップ奏法に憧れるもの。でも実際にやってみると、思ったように弾けない…しかも音色が派手な分、弾けていないのが余計に目立ってしまう…。こういった理由から、人前でなかなか披露できるようにならず、結局諦めてしまう人が多いです。
僕も最初はスラップに移行した途端、急に演奏が不安定になってしまうことから苦手意識を持っていました。しかしそれは奏法のための身体の使い方に慣れていないからです。これは指弾きやピック弾きにしても同じ。ベースを始めた頃には誰しも上手く弾けなかったはずです。
身体の使い方が、慣れ親しんだ奏法から急に変わるから難しく感じてしまう…ということは、まずはスラップにおける身体の使い方を理解することが、習得への近道だということ。この記事では、効率の良い身体の使い方を中心に、スラップベースの練習法を解説していきます。
スラップはコツさえ掴んでしまえば難しくありません。かっこよいフレーズを弾きこなして、バンドメンバーの度肝を抜いてやりましょう!
目次
スラップをスムーズに行う上で重要になってくるのは、右腕の使い方を理解すること。スラップといわれると、弦を叩いたり、引っ張ったりすることに意識を奪われて、効率の良い右腕の使い方ができていない人が多いのです。効率の良い右腕の使い方をマスターできれば、演奏時に以下のようなメリットが得られます。
効率の良い右腕の使い方をすれば、力を入れなくても弦をしっかり鳴らせるようになります。結果、常に力を抜いたプレイができるようになるので、音量も自然と揃うようになるのです。
スラップで音がバラついてしまうのは、弦を叩いたり引っ張ったりするときに余計な力が入っていることが原因になります。力が入ってしまう部分だけ音が強調されてしまう、または上手く弦が鳴らせないことから、音のバラツキが生まれてしまうのです。指弾きから移行したときに急に音が大きくなってしまう、弦を引っ張るプルの音ばかり目立ってしまう…という悩みを持っている人も多いですよね。これらはすべて、右腕の使い方を改善することで解消されます。
効率の良い右腕の使い方をマスターすると、スラップのときも思い通りのリズムで演奏できるようになります。スラップになると急にリズムが安定しなくなるのも、力が入ってしまっていることや、右腕がスムーズに動かせていないことが原因です。力が入ってしまっていては、腕の動きがぎこちなくなってしまいます。それと同じように、間違った腕の動かし方をしていると、動作に引っ掛かりがある分、想定よりも音を鳴らすまでが遅れてしまいます。遅れを取り戻そうにも、自分の狙ったタイミングで音を鳴らせないのだから、リズムが合うはずもないのです。
効率の良い右腕の使い方とは、引っ掛かりのない動作で、弦を叩いたり、引っ張ったりを繰り返せる使い方のこと。動作に引っ掛かりがなければ、自分の狙ったタイミングで音を鳴らすことができるようになります。
スラップといえば、高速フレーズに憧れる人も多いですよね。そんな高速フレーズも、スムーズな右腕の動きをマスターしていれば難しくありません。というのも、スラップは原理的に、高速フレーズを取り入れやすい奏法なのです。つまり右腕の使い方が間違っているのなら、それを正すだけでも、今よりうんと速く弾けるようになります。
以下よりスラップにおける効率的な右腕の使い方をマスターするための、具体的な方法を見ていきましょう!
本題に入る前に、スラップとはどういった奏法なのかについても、簡単に触れておきます。
スラップベースとは右手親指で弦を叩くサムピングと、右手人差し指、もしくは中指で弦を引っ張って音を出すプルの組み合わせで演奏する奏法のことです。
弦を叩いて振動させ、音を出すサムピング。叩く際に弦がフレットに当たるので、打楽器のような音が出ます。
弦を引っ張って音を出すプル。弦を引っ張る分、サムピングよりも弦が勢いよくフレットにぶつかるので、アクセントの効いた派手な音を出すことができます。
スラップを使って演奏すると、フレットに弦がぶつかる音が入るので、打楽器のようなリズミカルなプレイができます。また、弦を叩く、引っ張るという奏法の性質上、弦が暴れているような派手な音色を鳴らせるというのもスラップの特徴。その特徴を活かして、ベースソロなどにもよく利用されます。ギターでスラップを取り入れているプレイヤーもいますが、ベースの太い音色でスラップをしたときの迫力というのは、やはり唯一無二のものです。
練習に入る前に、ベースのセッティングもチェックしておきましょう。弾きやすい状態で練習した方が、その分習得も早くなるはずです。
スラップを行う上で気に掛けておきたいのは、ベースの弦高。弦高というのは、弦と指板上のフレットの距離のことです。距離が離れているほど「弦高が高い」といい、距離が短いほど「弦高が低い」といいます。
弦高が低いのにも、高いのにもそれぞれ利点があるのですが、スラップを習得するという目的上、ここでは低めの弦高をおすすめします。弦高が低いと弦のテンション感、つまり弦を触ったときの感触が柔らかくなるので、その分弾きやすくなるのです。
ベースのブリッジに付いているサドルを回して、高くすれば弦高は高く、低くすれば弦高は低くなります。サドルを上げ下げすると当然チューニングも変わるので、その都度チューニングしながら調整していきましょう。12フレット上の間隔で計るのが一般的で、低い弦高は1弦なら1.7mm以下、4弦なら2.2mm以下といった風に、弦の太さによってもその基準は変わってきます。
基準があるといっても、弦高は数字よりも音を聴いた感じで合わせるのが一番です。弦高を下げ過ぎると、弦がフレットに当たって「ビーン」という音がします。これを「ビビる」といいますが、この音があまり如実に鳴っているのは良くありません。
自分の耳で聴いて、この音の鳴り具合を許容範囲ギリギリに調整するのが、その人にとって一番低い弦高です。つまり「自分的に、このぐらいのビビりならOK」というラインを探ってください。これは押さえるフレットによっても変わってくるので、必ずすべて押さえて確認するようにしましょう。
またネックが反った状態で弦高をいじっても、上手くいかない場合があります。ネックの調整も自分でできないことはないのですが、慣れていない人が行うと返って状態を悪化させてしまうこともあるので、楽器店などで相談するのが無難です。このとき自分がベースを買ったお店なんかだと調整も頼みやすいですね。
ここからスラップにおける効率的な右腕の使い方を解説していきます。サムピングにしてもプルにしても、ここを理解していることが上達への鍵を握っているので、練習に取り組む前にしっかりと目を通しておいてください。
まずスラップには大きく分けて「親指上向き」「親指下向き」の二種類のスタイルがあります。どちらも優劣つけがたい奏法なのですが、右腕の使い方のコツを覚えるという意味では、親指下向きのスラップがおすすめです。
親指上向きのスラップは、親指をピックに見立てて、弦を振り抜く弾き方ができたり、そこからアップピッキングへ移行できたり、フレーズに幅を持たせることができます。
しかし慣れないと親指を立てる意識が働いてしまい、親指に力が入ってしまいやすいのです。スラップで上手く音を鳴らすポイントは、右腕を回転させる遠心力によって、親指がムチのようにしなることにあります。親指に力が入っていると、この遠心力が指先へ上手く伝わりにくくなってしまうのです。
その点親指下向きのスラップというのは、親指を立てることがまずありません。つまり自然と親指の力を抜いた状態になっています。
このことから、右腕の使い方のコツを掴むには、親指下向きスラップのほうが向いていることがわかります。そして親指下向きで右腕の使い方を覚えてしまえば、腕の角度を変えることで上向きのスラップに移行することも簡単です。
親指上向きスタイルに利点があるように、下向きにも「サムピングの速度が速い」「ベースを低く構えても対応できる」といった利点があるので、将来的には自身の目指す演奏スタイルによって選ぶのがいいですね。
前述の通り、スラップのコツは右腕の回転によって、親指をしならせることにあります。しならせた親指が弦に当たり、ムチのように跳ね返ってくることで弦が振動し、音が鳴っているのです。このことがわからず、ただ「弦を叩いて音を出そう」と思っているから、腕を回転させるのではなく、振りかぶった勢いで音を鳴らそうとする人が多いのです。このように認識が間違っていては、安定した演奏などできるはずもありません。
まずはベースを持たず、右手の力を抜いた状態で構え、写真の矢印と同じ動きで右腕を回転させてください。
こうすると親指がしなって動き、人差し指に当たってパチパチと音を立てるのがわかります。この親指が当たる対象を弦に置き換えたのが、スラップなのです。
ここからいよいよ具体的な練習を行っていきましょう。まずは親指で弦を叩くサムピングからです。
前項で触れた通り、サムピングは右腕の回転でしならせた親指を弦にぶつける動作です。しならせた親指は弦に当たると跳ね返るので、その結果弦に振動が起こり、音が鳴ります。サムピングで音が鳴らない人は、この跳ね返りが上手くいかず、弦を押さえつけることになってしまい、振動を殺してしまっているのです。
力を抜いた状態で、親指のしなりを上手く利用できていれば、弦に当たった親指は自然と跳ね返ってきます。このことを意識しながら、以下の練習フレーズに取り組んでみましょう。
4弦から1弦まで、まんべんなく音を鳴らせるように練習してください。弦に当てる部分は親指側面の骨の出っ張っている部分。叩く弦の位置は指板上の最終フレット近辺がやりやすいでしょう。この辺りも慣れてくれば、音色の好みによって調整することができます。
1弦2弦は鳴らしにくく感じますが、これも右腕の回転を使ったコンパクトな動きなら難しくないはずです。
サムピングの動きに慣れてきたら、その中にどうやってプルを盛り込んでいくのかを見ていきましょう。
プルは人差し指で行うイメージを持っている人も多いでしょう。しかし場合によっては、中指を使う方がスムーズに行えることがあります。親指上向きスラップの場合、人差し指の方がやりやすいのですが、親指下向きの場合、人差し指と中指で弦に引っ掛かる角度が同じなので、どちらを使ってもやりやすさは変わらないのです。
そして人差し指よりも、中指の方が親指から離れていることもあって、弦間隔が離れたフレーズを弾くには、中指でプルをした方がやりやすい場合があります。もちろんこれは手の大きさなど、個人差のあるものなので、やりながらいろいろと試してみてください。
プルは弦を引っ張るというよりも、右腕の回転に巻き込むようなイメージで行います。音が変に強調されてしまったり、リズムが崩れてしまったりするのは、弦を引っ張ろうとする意識が強いからです。引っ張るという意識が強いと、腕を回転させるのではなく、ベースから引き上げるような動きになってしまいます。
これではプルのときに右腕の回転を止めて、まったく別の動きをすることになりますよね。その動作の切り替えが引っ掛かりを生み、リズムを狂わせてしまうのです。またこの動きでプルをすると、どうしても力が入ってしまうので、音も変に強調されてしまいます。
サムピングで弦を叩こうとするとき、遠心力を付けるために、まずベースとは逆方向に腕を回しますよね。この逆方向に腕を回す動作にプルを入れます。
つまりサムピングの準備の動作にプルを入れるということ。サムピングを行うときも、プルを行うときも、同じ右腕の回転の動きを使うから、安定した演奏ができるのです。
以上のことから、サムピングとプルは一連の動作になっているのが望ましい状態です。プルのみで練習するよりも、サムピングと組み合わせたフレーズで練習する方が、コツも掴みやすいはずですよ。何度もいいますが、引き上げるのではなく、右腕の回転に巻き込むことを意識して練習してください。
腕の回転を利用したサムピング、プルが身に付けばスラップは難しくありません。ただ、サムピングとプルのオクターブフレーズだけでは、練習フレーズのようでイマイチかっこがつかないですよね。
これもちょっとしたテクニックを盛り込むだけで、一気にそれらしいフレーズに早変わりします!ここから紹介するものは、どれも幅広いシチュエーションで使えるテクニックなので、覚えておいて損はないですよ。
ゴーストノートを使ってプレイするのが、スラップの基本になります。スラップは何をいってもリズムが命。そして音の鳴っている部分よりも休符の部分、つまり音の鳴っていない部分がリズムにおいては鍵を握っています。
スラップを使えば、音を鳴らさないゴーストノートの部分でも、弦が指板に当たるアタック音を入れることができるので、休符がよりリズミカルに聴こえるのです。
ハンマリングを絡めるとフレーズがファンキーな面持ちになります。よく使われるのは、プルのときの7thからオクターブの動き。7thを説明しようと思うとちょっと理論が絡んでくるので、とりあえずは譜面を弾いてみて「これが7thか」と思ってもらえればOKです。
ハンマリングを使った三連符の動きなんかも、スラップの定番フレーズ。スラップを使えば、こういった高速プレイも簡単にできてしまうんです。
二つの弦で同時にプルを行う「ダブルプル」というテクニックもあります。派手な音が鳴るので、周りをあっと驚かせたい場面や、フレーズにスパイスを加えたい場面で使えますね。譜例だと2弦を人差し指、1弦を中指でプルを行います。
二つの弦で同時にプルを行うというだけで、基本的な考え方は変わらないので、見た目より簡単にできるはずです!
スラップを身につける上で大切なことは、何を置いても右腕の回転と、それに伴う親指のしなりにあります。多くの人がこのことを理解せずに練習に取り組もうとするから、余計に難しく感じてしまうのです。
「スラップは右腕を回した遠心力で、しなった親指を弦にぶつける動作」
これを念頭に置いて練習すれば、必ずできるようになります。スラップはベースの花形。これを使いこなすことで、あなたがさらに楽しくプレイできるようになることを願っています!