バイオリンの基礎知識
バイオリンはどのような楽器でどのような構造になっているのでしょうか。まずは、バイオリンの歴史や音の出し方から必要なものなど、全体像をつかんでいきましょう。
バイオリンの歴史
バイオリンはイスラム圏で使用されていたラバーブという弦楽器が起源だと考えられています。このラバーブがヨーロッパへ伝わった際に、立てて弾くタイプや抱えて弾くタイプのものに発展し、抱えて弾くタイプのものがバイオリンになっていきました。
バイオリンとしては16世紀と楽器としては古くから存在し、改良を重ねることで現在のバイオリンの形となっています。その後、合奏に多く用いられるようになり、有名作曲家たちによってバイオリンを中心にしたオーケストラが作られるなどして、様々な楽器の中でも中心的な存在となっていきました。
また、バイオリンが登場した16世紀の中頃には日本にも伝わり、ポルトガル人の修道士が日本の子供たちに教えていたと記録されています。
バイオリンはどのような構造になっている?
バイオリンはどのような構造になっているのでしょうか。バイオリンは本体に張られた弦を弓に張られた馬の尻尾の毛で擦ることで音を鳴らしています。本体は空洞になっており、アコースティックギターなどと同じように音を反響させて響かせています。
指板部分の弦を抑えることで音に変化を与えることができ、指板部分の先端には弦を巻くためのペグがついており、弦の張り具合で音程を調整できます。
また、肩に乗せて立って弾けるように、あご当てがついている点が特徴でしょう。
バイオリンに必要なアイテム
バイオリンを始めるにあたってバイオリン本体以外に必要なものがあります。消耗品であれば交換の度に費用が掛かるでしょう。どのようなものが必要になってくるのかを確認しておきましょう。
弓
弓はバイオリンを弾く上で必ず必要な物でもあり、弓に張ってある馬の尻尾の毛と弦の摩擦によって音が出ているため、音質に直接関わる重要な部分でもあります。初心者用のセットなどでは初めから適した弓がついている場合もありますが、上達するにつれ自分に適したものを選ぶようにしましょう。
選び方としては弾いてみたときの音はもちろん、弓の材質や重さ、持って弾いた時にしっくりくるバランスのものを選ぶと良いでしょう。
価格帯としては数千円のものから数千万までバイオリン同様に幅広くありますが、手が届く範囲で良いものを使用するのをおすすめします。
松脂
バイオリンは弦を弓に張ってある馬の尻尾の毛で擦って音を出していることは説明していますが、弓毛には松脂を塗らなくてはいけません。この松脂を塗ることで弦と弓毛の摩擦が大きくなり、聞きなれたバイオリンの音が出ています。
塗らずに弾くと音も小さく、かすれた音が出るでしょう。この松脂も様々な特徴を持ったものがあります。弦や弓毛との相性や弾き心地に注意して良いものを探しましょう。
弦
入門セットのバイオリンには、あらかじめ弦が張ってある場合も多いですが、使用頻度によって切れることがあります。また、弦は使用していくにつれて伸びていき音質も低下してくるので、定期的な交換の必要もあるでしょう。そのために前もって替えの弦を用意しておくとよいでしょう。
弦は素材によって、スチール弦、ガット弦、ナイロン弦と大きく3種類に分けることができます。スチール弦は音は固めですが、チューニングしやすく耐久性に優れているので初心者の方におすすめです。ガット弦はバイオリン本来の柔らかい優しい表現をすることが可能ですが、扱いにくく耐久性にも弱いので初心者では使用するのが難しいかもしれません。ナイロン弦はスチールとガットの弦の中間にあるような性質を持つ、現在主流となっている弦です。様々な種類があるので使いやすい弦を選びましょう。
肩当
肩当は必須のアイテムというわけではありません。首や肩の形状によって不要な人や音質面への影響を嫌い使用しない方もいます。バイオリンを正しいフォームで持てているか、持ちにくくないかをチェックして、必要であれば購入しましょう。
肩当は材質や形状に様々な種類があります。まず、材質で言えば木製のものやプラスティック、金属などの種類があります。形状においては、ブリッジ型と言われるバイオリンの本体の裏面に固定して肩が楽器から離れるようになっているものと、クッション型と呼ばれるバイオリンに固定して使う小さなクッションのようなものがあります。あまり高さが必要ない方にはクッション型がおすすめです。自分の肩や首に合う、弾きやすいフォームでバイオリンを持つことができるものを選びましょう。
チューナー
バイオリンは使用状況や時間の経過によって弦の状態も変化し、本体自体も繊細なので、こまめに正しい音程に調整する必要があります。そのためにチューナーと呼ばれるアイテムを使用し、チューニングを行います。
マイクが内蔵されており、正しい音になっているか、どのぐらいずれがあるかを判定してくれます。
デジタルタイプのチューナーの他に笛や音叉と言われる金属の棒の音を参考に聞き比べながらチューニングする方法もありますが、耳が慣れていないと同じ音になっているか判断するのが難しいので、まずはデジタルタイプのものが良いでしょう。
ペグコンポジション
ペグコンポジションとは、バイオリンの先端についている弦を巻き取るペグの滑りを調整するものです。ペグはチューニングに大きく影響を与えます。
このペグコンポジションを塗っていない場合には、ペグが硬すぎてチューニングしずらかったり、逆にすぐに緩んでチューニングが狂いやすいことがあるでしょう。そういった場合にペグに塗ってペグの滑り具合を整えましょう。
保管メンテナンス用品
バイオリンは繊細な楽器であるため、メンテナンスや保管にも気を付ける必要があります。練習後や演奏をした後はクロスやクリーナーを使って、汗や埃などの汚れをふき取り、きれいな状態を保ちましょう。
また、保管や持ち運ぶ際にはバイオリン本体をしっかりと保護してくれる専用のケースに入れると良いでしょう。
これらのメンテナンスや保管は他の楽器でも同様ですが、バイオリンは大部分が木でできているため温度や湿度によっても本体がダメージを受けやすい楽器です。気温や湿度によっては加湿器・乾燥剤・湿度調整剤などを使用して保管する必要があります。
バイオリンの練習方法
バイオリンを実際に練習する際に気を付けたいのが音です。コンサートホールなどでも生音で響くような大きい音が出るように出来ているため練習する場所などを考えなくてはいけません。バイオリンはどういった場所でどのようにして練習すればよいのでしょうか
バイオリンの練習環境
バイオリンを練習するために音が周囲の迷惑にならないようにしなくてはいけません。自宅が大きい音を出しても周囲に迷惑がかからないようであれば問題ありませんが、そうでない場合には防音対策がしっかりしている場所で練習する必要があるでしょう。
具体的には音楽教室や音楽スタジオ・カラオケボックスなどがあります。また、地域の楽器を演奏してもよい公共施設を使うのもよいでしょう。
バイオリンの練習に必要なもの
バイオリンを練習する際にあると便利なアイテムもご紹介します。まず、バイオリンの音を小さくするためのミュートがあります。バイオリンの振動を抑えて音を小さくしてくれます。しかし、完全に消えるわけではなく、音も変化するので音感を損なう恐れもあるため注意が必要です。
最近では練習用のバイオリンとして、音を増幅させる本体部分がなく、イヤホンで実際にバイオリンを生で弾いたような音を確認することができるサイレントバイオリンといった商品もYAMAHAから出ています。楽譜を置く譜面台もあると便利でしょう。
自身の練習のスタイルを考えてこれらも検討してみてください。
自分に合ったバイオリンの選び方
バイオリンは楽器によって大きさや出せる音なども様々です。どのようなポイントに気を付けて選ぶ必要があるでしょう。
手作りのものを選ぼう
バイオリンは主に自然素材で作られていますが、安価なものは大量生産的に製作され調整が甘いものが多くあります。この調整の甘さは音の響きにも直接関わります。なるべく手作業で精巧に作られたものを選ぶと良いでしょう。
音の響きで決めよう
購入する際は実際に音を聞いてみて決める必要があるでしょう。初心者だからわからない、といった方も多いかもしれませんがじっくり聞いてみて、いい音だと思う好みのものを選ぶと良いです。
バイオリンを弾くことができる方は実際に試奏をしてみて、弾けない方でもお店のスタッフの方に弾き比べてもらうなどしましょう。
またレンタルをして検討するのも一つの手段です。
弾きやすさで選ぶ
音質とともに弾きやすさにも注意しましょう。バイオリンはネックや本体の大きさ、厚み、形状も様々です。実際に手に取って持ち比べてみて、自分の体や手に馴染む弾きやすいものを選びましょう。
ジュニア用バイオリンについて
どの楽器にも子供用のサイズの小さいモデルがあるように、バイオリンにも子供用のバイオリンがあります。バイオリンの場合は分数バイオリンと呼ばれる小さいサイズのものがあります。このサイズが小さい子供向けの分数バイオリンは数種類のサイズがあり、分数で表示されています。
一番小さいもので1/16と表記し、通常の大人用のフルサイズのものは 4/4になります。身長によって使用に適した大きさのバイオリンを選び、お子さんにあったものを選びましょう。
下記に分数バイオリンの選ぶ際の身長の目安と、各年齢の標準的な平均身長を表にまとめましたので参考にしながら選んでみましょう。
身長による分数バイオリン選択の目安
105㎝以下 | 105~110 | 110~115 | 115~125 | 125~130 | 130~145 | 145㎝以上 |
1/16 | 1/10 | 1/8 | 1/4 | 1/2 | 3/4 | 4/4 |
暦年齢による標準身長平均値
2才 | 3才 | 4才 | 4才半 | 5才 | 5才半 | 6才 |
85.4㎝ | 93.3㎝ | 100.2㎝ | 103.5㎝ | 106.7㎝ | 110.0㎝ | 113.3㎝ |
6才半 | 7才 | 8才 | 9才 | 10才 | 11才 | 12才 |
116.7㎝ | 119.6㎝ | 125.3㎝ | 130.9㎝ | 136.4㎝ | 142.2㎝ | 149.1㎝ |
これらの表はあくまでも目安となるものです。手の長さなど、この表だけでは判断できない部分も多いので実際に手にしてみて選ぶのが良いでしょう。
また、子供の成長は早いので成長の度合いや、どのぐらいの時期まで使用するかなども考慮する必要があります。
初心者におすすめのバイオリン9選
それでは、いよいよ初心者でも手に取りやすいおすすめのバイオリンをご紹介します。これまでの知識や選び方を参考に見てみましょう。
NSN60S Nicolo Santi(ニコロサンティ)
初心者用のモデルとして人気が高いのがこのニコロサンティのNSN60Sです。セットでも5万円前後と手に取りやすい価格ですが、しっかりと職人による手作業で微調整を重ね精巧に作られています。安価な物でもバイオリン独特の優しく豊かな表現力を求める方におすすめです。
VL80 EASTMAN(イーストマン)
イーストマンのVL80です。こちらも6万円ほどと手に取りやすい価格で、NSN60S同様に職人の手作業により丁寧に作られています。初心者用のモデルとしても人気なので入門セットで販売してあることも多いでしょう。明るくまっすぐした音は扱いやすく、品質も良いので入門用におすすめです。
Antik GEWA(ゲバ)
GEWAはドイツの有名ブランドです。中でも入門用に人気なのがAntikです。
20万円ほどで各楽器店でセットになったものや、入門モデルとして作られたものなどがあるのでチェックしてみましょう。音の鳴りもよく、深みのある音でアンティーク調のデザインなので、初心者でもかっこよく演奏したい要望にも応えてくれるでしょう。
V25GA YAMAHA(ヤマハ)
様々な楽器を製作している国内の有名メーカーのYAMAHAですがバイオリンも製作しています。V25GAはアンティーク仕上げのデザインが人気です。
28万円ほどと少し高めですが、大手有名メーカーならではのしっかりとした品質と、低音域もしっかりと出すことができる安定した音色で、これからも長く付き合っていくことができるでしょう。
VL100 Pygmalius(ピグマリウス)
Pygmaliusは日本の弦楽器を製作しているブランドです。熟練の職人によって仕上げられた製品は確かな品質で人気を得ています。中でも入門モデルとしてリリースされているVL100はクリアで柔らかい音で演奏しやすいバランスのバイオリンです。
価格、品質共に初心者の方におすすめのバイオリンです。VL100は11万円ほどで購入できるでしょう。
SV-120 STENTOR(ステンター)
STENTORはイギリスの弦楽器メーカーです。2万円ほどと非常に安価なので、まずはバイオリンがどういった楽器かちょっと試してみたい方などにおすすめします。
No.230 Outfit 鈴木バイオリン
鈴木バイオリンは日本で初めてバイオリンを製作した老舗バイオリンメーカーです。中でもNo.230 Outfitは約7万円と手頃な価格でありながらしっかりとした品質と使いやすさを感じることができるでしょう。
ケースや松脂なども付属するので、老舗メーカーが選んだバイオリンに適したアイテムも一緒に購入したいという方におすすめです。
YSV104 YAMAHA(ヤマハ)
こちらのYSV104は他のバイオリンとは異なり、練習用に作られたサイレントバイオリンです。バイオリン本体の共鳴する部分がないので弦の振動による音のみで練習ができます。
また、付属のコントロールボックスにイヤホンをつけて弾くことでバイオリン本来の音をリアルに再現することができます。手軽に自宅でも練習がしたいという方などにおすすめです。
YEV104 YAMAHA(ヤマハ)
このYEV104はバイオリンを新世代の楽器として進化させたエレクトリックバイオリンです。
エレキギターのようにピックアップで弦の音を拾い、シールドを使用することでアンプやエフェクターにつなげて、音量調節や加工を簡単に実現できます。クラシック以外のジャンルに使用したい方や新しい音を追求する方におすすめです。
バイオリンで素敵な曲を演奏しよう
バイオリンは非常に高価な楽器のイメージがあり、楽器本体だけでなく、メンテナンスやスクールに通う費用もとても高額なものであると思っている方も多いでしょう。しかし、初心者用のバイオリンであれば、他の楽器と変わらず安価に手に取ることができるものも多くあります。また、現在では通いやすい価格でバイオリンを習うこともできます。これまでのイメージを捨て、バイオリンの世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。